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アマゾン書籍買い切り方式導入で既存の書店は壊滅する

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こんばんは、ふくろう主です。

 

先日、アマゾンが書籍の買い切り方式を導入するとのニュースが流れました。

いずれは来るだろうと思っていましたが、遂にこの時がきてしまいました。

headlines.yahoo.co.jp

 

文字通り、アマゾンが直接出版社から本を買い取り、販売するこの方式。

現段階では試験的な導入で、対象となる書籍は出版社側と協議して決定。一定期間の定価販売を経て残った本を値下げ販売する、という事になっていますが、この制度のもと話し合いに持ち込まれた出版社は、早晩全ての書籍を対象とせざるを得なくなると思います(アマゾンが望まないものは別ですが)

この動きでアマゾンがいったい何を狙っているのか? 表向きは返品率の改善と言う事になっていますが、実際には日本の再販制度の破壊、そして既存書店と取次の壊滅でしょう。

 

アマゾンのこの動きには、実は布石がありました。2017年6月30日に終了した、取次への「バックオーダー発注」の廃止です。

アマゾンの取引先の取次である日販の倉庫に商品在庫がない場合、出版社へ注文するというのがバックオーダー発注です。これが廃止されると、いくら出版社に商品在庫があろうとも、日販の倉庫に在庫がなければアマゾンから商品を買う事はできません。

そしてアマゾンはバックオーダー発注を中止する代わりに、取次の日販を介さず直接取引をしませんか? と各出版社に持ちかけた訳です。

露骨な取次外しと言えますが、既に販売の多くをアマゾンに依存していた中小出版社などは首を縦に振るしかなかったでしょう。細かい取引条件などは不明ですが、取次の取り分をアマゾンが頂く形になる訳で、出版社にとってどちからが有利とも言えないものではないかと推測されます。

また、既存の書店店頭でも並べられるのは大出版社のベストセラーばかりで、中小出版社の本は配本されてもすぐに返品されてしまうケースが多く、顧客と商品がダイレクトに繋がるアマゾンの方が売上に貢献する場合が多かったのでしょう。いまではかなりの出版社がこの直接取引に参加し、その数は2000社以上になっています。

この動きに、取次と書店が関与できる事は何一つありません。ただでさえ減少している雑誌書籍の売上はアマゾンと出版社で分けられ、取次と書店の売上減少は更に加速していきます。

今回の書籍買い取り方式の導入はこの動きの延長線上にあります。

 

アマゾンが狙っていると思われるもう一つの標的、再販制度とは何か簡単に説明しますと出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる制度です。独占禁止法では禁止されていますが、一部著作物ではこれが認められています。逆に言えば本の値引きをするのは法律違反という事になります。

なぜこうした制度があるのか?

少々長いですが、日本書籍出版協会のサイトから引用します。

なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか?

出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。
①個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、
②種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、
③新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。
このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。
書店での立ち読み 風景に見られるように、出版物は読者が手に取って見てから購入されることが多いのはご存知のとおりです。
再販制度によって価格が安定しているからこそこう したことが可能になるのです。


再販制度がなくなればどうなるのでしょうか?
読者の皆さんが不利益を受けることになります。
①本の種類が少なくなり、
②本の内容が偏り、
③価格が高くなり、
④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、
⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。
再販制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。
また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。

 

 引用元:http://www.jbpa.or.jp/resale/

 

なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか? という質問の1、2、3は納得ができます。確かに著作物は内容、種類が多岐に渡り、出版不況と言われる今でも大量の新刊が出版されています。

しかし「このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です」の文言にはおおいに疑問があります。先に述べた通り、すでに書店の店頭はベストセラーで埋め尽くされています。とにかく売上の足りない書店は一冊でも多くの本を売るため多様な本との出会いを演出する場ではなくなっています。

書籍のレビューをされるブログなども多数ありますが、大抵はアマゾンの商品リンクが貼ってありますし、むしろアマゾンの方が良質な本との出会いを促進しているのが現状なのではないかと思われます。

次の再販制度がなくなればどうなるのでしょうか? という質問も、何となく納得できる答えのように聞こえますが、価格云々は別として再販制度が維持されている現在も同じような状況になっていないでしょうか?

 

アマゾンは買い切り方式の導入と、売れない本の値下げを通じて、これらの枠組みを一気に破壊し出版業界の構造そのものを変革してしまうつもりではないでしょうか?

取次と書店外しに取り組みはじめたアマゾンを止める術は残念ながらないでしょう。最早、取次と書店の居場所はどこにもありません。

ただ壊滅とは書きましたが、もちろん全ての書店が死に絶える訳ではないと思います。紙の本の需要は根強くあり、また書店を巡る人々も一定数はいるからです。

書店が減少していけば需要は集約され、生き延びる書店も少しは出てくるでしょう。ただしそれは、都会の大書店か郊外の大型SC内にある書店など、ほんの一部に限られると思います。

最近の書店の閉店ニュースなどを見ても、「残念だな~。たしかに最近行ってなかったけど」的な言葉をよく見ます。書店に必要なのはそうした憐憫の言葉でなく売上です。そして最早売上を能動的に伸ばしていく事が書店には不可能になってきています。

 

出版文化は電子書籍など、形を変えて生き残るでしょうが・・

 

このアマゾンの改革の果てに何が起きるか、楽しみでもあり、恐ろしくもあります。業界に長く身を置いた者としては、書店の奮起に期待したいところではありますが、再販制度に慣れてしまった業界が、既得権益を破壊された後一般の商慣習に対応できるかと言うと、無理があるのでは? というのが正直な感想です。

そして、現在は取次との兼ね合いもあって出版社にもそれなりに配慮しているかも知れませんが、取次が不要となり、書籍の流通を完全に掌握した時アマゾンが出版社に対してどう出てくるかは恐ろしいところでしょう。

発言力のあまりない中小の出版社は、アマゾンに締め上げられて倒産するところも出てきそうです。まぁ、それがなくとも中小出版社は次々倒産していますが・・。

 

 

↓近々の書店の厳しい業績はコミック雑誌発行部数などにも現れています。 

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